神奈川マイカルテの認証は本当に妥当か?

 「神奈川マイカルテ」の運営を行う第1号の事業者を認証しました!として、株式会社グッドサイクルシステムを認証したと発表された。

 しかし、認証された株式会社グッドサイクルシステムのプライバシポリシーの「個人情報の取り扱いについて」の「1.個人情報の取得及び利用目的について」の(1)に次のような驚くべき記載がある。

取扱製品・サービスに関する企業ユーザー・個人ユーザー・ビジネスパートナー等への営業活動 (情報提供、コンサルタント、受注、納品及び代金の請求・受領等)

 かっこ書きに例示されている「受注、納品及び代金の請求・受領等」は事業を営む上で妥当な利用目的であるのは明白なので、これを除くと次のようになる。

取扱製品・サービスに関する企業ユーザー・個人ユーザー・ビジネスパートナー等への営業活動 (情報提供、コンサルタント)

 平易な文章に再構成すると次のようになることは明白だ。

株式会社グッドサイクルシステムは、情報提供やコンサルティング業務のために取扱製品・サービスで入手した個人情報を企業ユーザー、個人ユーザー、およびビジネスパートナー等への営業活動に使用する。

 ここで、「神奈川マイカルテ」で扱われる情報を改めて考えて欲しい。処方薬局で提供されるお薬手帳をモバイルアプリケーションで行うのであるから、いわゆる個人情報4要素はもとより、これに紐付く形で処方薬名と処方量、そして使用頻度を収集されることが容易にと想定できる。この収集される情報は医療に関わる情報なので機微情報であるとともに個人情報保護法で保護の対象となっている個人に関する情報であるのは言わずもがなだ。
 この個人情報保護法で保護の対象になっている個人に関する情報である上に機微情報でもある情報を上記のように営業活動に使用すると明言している企業を神奈川県が「運営者として問題がない」と認証するのは明らかに不適切な行政事務だと考えたので、2014.09.05 1415時に次のようなメールを担当の保健福祉局 保健医療部 医療課へ送信した。(PNG)

「神奈川マイカルテ」の運営を行う第1号の事業者を認証しました!
http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p835944.html
として、株式会社グッドサイクルシステムを認証したとあるが、同社のプライバシポリシー https://archive.today/QPLx5 の「個人情報の取り扱いについて」の「1.個人情報の取得及び利用目的について」で個人情報の利用として取扱製品・サービスに関する企業ユーザー・個人ユーザー・ビジネスパートナー等への営業活動が掲げられている。
お薬手帳の内容という機微情報にひも付いた個人情報を営業活動に使うと宣言する企業を神奈川県として認証するのは問題があると考える。

 現行個人情報保護法で保護対象になっているのはいわゆる4要素に限定されたものではなく、個人に遡及するすべての個人に関する情報あるので、上記のように個人情報保護法を理解せず、無限に第三者提供するとする企業を神奈川県として認証することは断じて許容できない。

 そうしたところ、2014.09.17 0957時に神奈川県医療課より「神奈川県医療課_「神奈川マイカルテ」の承認について」と題する次のような返信を受け取った。(PNG)

○ 様

 株式会社グッドサイクルシステムの認証に関するお問い合わせについて御回答いたします。

 県では、「神奈川マイカルテ」の運営を行う事業者募集にあたり、募集要項に定めている認証要件を満たす事業者を認証しています。
個人情報の取扱いに関しては、募集要項に定めている「民間事業者を運営主体とした神奈川マイカルテ実証実験 個人情報保護のルール」を遵守することを要件としており、このルールでは、利用者の意図しない情報の利活用によって不利益が生じることを防ぐ観点から、ユーザー数やデータ件数など、サービスの利用状況を把握する目的以外での情報の利活用を禁止しています。
 株式会社グッドサイクルシステムはこのルールを遵守することに合意していましたので、認証要件を満たしていると評価し、県として認証することとしました。
 なお、お問い合わせ内容にありました、「お薬手帳の内容という機微情報にひも付いた個人情報を営業活動に使う」ということについて、県から株式会社グッドサイクルシステムに問い合わせをし、「『個人情報の取扱いについて』の記載については、利用者のお薬情報などの機微情報を営業活動に利用することや第三者提供する意図は
想定していない。しかし、一般の方に誤解を与える恐れがあるため早急に見直しを行う」との回答を得、お薬手帳の内容を第三者提供する意図がないことを確認しています。
 こうした県の取組みに御理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

問い合わせ先
神奈川県保健福祉局保健医療部医療課
調整グループ 梶
電話 045–210–4865

 神奈川県保健福祉局保健医療部医療課の主張は次の通り。

  1. 「民間事業者を運営主体とした神奈川マイカルテ実証実験 個人情報保護のルール」を遵守することが募集要件であり、ユーザー数やデータ件数など、サービスの利用状況を把握する目的以外での情報の利活用を禁止している。
  2. 株式会社グッドサイクルシステムは1項に合意したので認証した。
  3. 株式会社グッドサイクルシステムは利用者のお薬情報などの機微情報を営業活動に利用することや第三者提供する意図は想定していないと回答した。
  4. 株式会社グッドサイクルシステムは一般の方に誤解を与える恐れがあるため早急に見直しを行うと回答した。

 しかし、冒頭で説明したように

株式会社グッドサイクルシステムは、情報提供やコンサルティング業務のために取扱製品・サービスで入手した個人情報を企業ユーザー、個人ユーザー、およびビジネスパートナー等への営業活動に使用する。

のであるから、1項に同意していないことが明白であるので2項の合意も成立し得ず、3項の回答も虚偽であり、自分で作成して掲出しているのに4項であたかも「そのように読んだやつが誤解するのが悪い」と言わんばかりの回答も利用者および神奈川県を馬鹿にした回答だ。

 さて、「神奈川マイカルテ」の運営を行う第1号の事業者を認証しました!を再度よく見て欲しい。

a. 事業者は、株式会社グッドサイクルシステムである。
b. 事業者の提案する電子版お薬手帳サービスはpharumoである。

 すなわち、電子版お薬手帳サービスはpharumoを株式会社グッドサイクルシステムを運営すると読める。しかし、株式会社グッドサイクルシステムの当社製品の紹介を見るとpharumoは存在しないので、少なくとも「電子版お薬手帳サービスはpharumoを株式会社グッドサイクルシステムを運営する」ということ自体が虚偽である。
 ではどういうことなのかというと、「神奈川マイカルテ」の電子お薬手帳として認証を頂きました | 株式会社ファルモのとおり、pharumoなるものは株式会社ファルモの製品であり、株式会社グッドサイクルシステムが株式会社ファルモと提携しているにも関わらず、株式会社グッドサイクルシステムがpharumoをさも自社製品であるかのように偽って神奈川県に応募したことが分かる。
 このような構成なのだから、pharumoを提供する株式会社ファルモ自体も個人情報保護方針およびプライバシーポリシーを策定および掲出してあり、株式会社グッドサイクルシステムと株式会社ファルモ間での個人情報の扱いが第三者提供なのか委託なのかが明示されていなければならないだろう。ところが株式会社ファルモの企業WEBサイトには、個人情報保護方針どころかプライバシーポリシーさえ掲出されていない。さらに、株式会社グッドサイクルシステムのプライバシポリシーにも株式会社ファルモ間での個人情報の扱いがなんら記載されていないていたらくだ。
 ただし、pharumoの製品WEBサイトと思われるファルモ – お薬手帳がスマホでもっと安心、もっと便利ににはプライバシーポリシーが掲出されており、株式会社ファルモは会社として個人情報保護方針どころかプライバシーポリシーを持っていないのに、サービスにだけ用意するといういびつな個人情報への取り組みをしているとしか感じられない。さらにこのプライバシーポリシーの「2.利用の目的」の(2)に

メールマガジン、各種キャンペーン、医療情報、広告情報の配信また、当社の事業を遂行する上で必要な範囲でのアンケート及び通知その他の連絡のため

という利用目的が掲げられているのも気になる。「メールマガジン、各種キャンペーン」は妥当なものだとしても、
– 「医療情報」は何の資格に基づいて配信するつもりだろう?
– 「広告情報の配信」ともあるが、まさかpharumoに広告SDKを寄生させ、さらにpharumoで取得したお薬手帳の内容に基づいたターゲティング広告を突っ込む気だろうか?
– 「当社の事業を遂行する上で必要な範囲」とあり、何ら具体的かつ限定していない。(株式会社ファルモの定款に名簿業がひっそり追加された場合には、名簿業者にpharumoで医療方法という属性情報付きで個人情報を売り飛ばして「事業を遂行する」とでものたまうのか?)

 以上のように、神奈川県が「神奈川マイカルテの認証」をした株式会社グッドサイクルシステムと株式会社ファルモについては両社とも企業としての個人情報保護の姿勢があまりにも取って付けたものであり、神奈川県という自治体が認証するに値しないものだと考える。

 末尾にお断りするが、論拠はすべて株式会社グッドサイクルシステムと株式会社ファルモが掲出している情報を元にしており、これに論評を加えたものだ。くれぐれも先に言っておくが、本記事をネタにSLAPP訴訟を思いつく前に両社とも自分がやっている愚策を再考して欲しい。(クソ会社とその代表ほどSLAPP訴訟をちらつかせるのは何度も体験している)

広告
神奈川マイカルテの認証は本当に妥当か?